「秋と霖」あとがき
「秋と霖」読んでくださってありがとうございます。
まだ読まれていない方はこちらからどうぞ。
この台本を書き始めたきっかけは、そういえば戀し春みたいなワンシーンで終わる台本を男女で書いてないなっていう気づきからでした。でも、よく考えてみれば王と死神があったなあと書いている途中で気づきました。
そして、”なんか最近秋の気配を感じるな!秋のお話を書きたいなあ!”というのと、”短い声劇台本らしいものを最近書けていなかったので書こう!”というのとが色々合わさって出来上がった台本でした。
芸術の秋ということで、絵にまつわる話にしてみました。
私の母が絵の仕事を昔していて、今も趣味で描いているのですが、母がそういった学校を出ていたのを思い出していろいろ聞いたり、楽しかったです。
タイトルの「秋と霖」ですが、秋霖という秋の始まり辺りでしとしと降る雨のことを差す言葉から来ています。これを使いたいなあと思っていたのですが、漢字二文字シリーズと混ざりそうだなと思って断念しました。
そして、秋の長雨という言葉もありまして、こちらは秋は秋雨前線などの影響で長く降るということを差す言葉になります。
秋霖の”霖”という感じは訓読みで、”ながあめ”とも読むそうで「秋と霖(あきとながあめ)」という作品名になりました。
別に台本に季節を絡ませなくても良いと思うのですが、どうしても季節の話を取り入れたくなってしまいます。
フライヤーというのでしょうか……?台本ごとのあの画像なのですが、いつもいつも悩んでいて、前回のみこまつりでは絵を描いたのですが、今回はまあ、芸術ってことで!といい聞かせながら、水彩ペンでペタペタとイメージの色を塗っただけになりました。夫に見せると、なんだか国語の教科書みたいだねと言われました。確かに……。
あの画像を作るのと、題名を決めることに手間取って台本が挙げられないのが悩みですね……。センスがほしい。
ここから、人物について書いていきます。
この二人、数カ月ほどバス停でよく出くわしていて、挨拶から、すごく軽い世間話を交わすぐらいの関係になっていったのですが、女は最初から男があのときのあの人であると気づいていました。
台本では絵を描いていますが、あそこに男が来たのは本当に偶然で、出来上がった絵を後日、なにか話すわけでもなく男に押し付け、挨拶をして引っ越す予定でした。
バス停はあの絵のこともそうですが、高校の時、あの人に今日は会えるかな、どうしたらもっと見てくれるかななんて考えながらバスを待っていた彼女にとっては特別な場所です。
だから、その特別なバス停でなんとか気持ちに区切りをつけたいと、過去のことと向き合って、男が来るまでは絵を描いていました。
だからこそ、男にああやって話せたんだと思います。
男に抱いていた名前もつけられない重たい感情を、彼女は手放したくて仕方がなかった。
埋まらない穴を埋めたかった。
でも、結局それがもう叶うことはないと気づけただけでも、彼女は今までよりも少しは前を向いていけるんじゃないかなと思います。
女もかなり重たいですが、それの何十倍も重たいのが男です。
男は女が描いた絵を見るまで、なにも気づいていませんでした。
男:「……なにをされているんですか?」
女:「絵を描いているんです」
(男に絵を見せる女)
男:「……」
女:「あまり上手ではないんですけどね」
男:「……」のところで、男はとんでもない感情になっています。
そもそも、男は女の絵を見たことで絵が描けなくなったと勝手に思っていますので、女が絵を描いていることにも腹立たしさを感じていますし、いろいろ思い出してごちゃごちゃしています。でも、女がもう絵は完全にやめていますと知っても怒っていると思うので、どうしようもありません。
二人とも恋とは名付けられない歪んだ感情をお互いに抱いているのですが、それは惹かれているというのもあるのかなと。
男はそれが癪で、他の子をほめちぎってしまうのですからもう救いようがありません。
高校生の女の心が折れて美術部をやめた後、あんなにつきまとっていた女がいなくなったことにも、絵を描かなくなったことにも男は内心、かなり荒れていたと思います。
それで、台本内では描いていないのですが、男が引っ越したのもあの絵のバス停を探し出して、いつか女と会うためでした。
自分はこんなに苦しんで、絵も描けなくて、親からも失望されたのに、女だけはあの時のことをさっぱり忘れて、ぬくぬくと絵を描いているんじゃないだろうかと。
正直、絵を描ける描けないではなくて、自分と同じように、男が女の心に影を落としているのかどうかに重点を置いているのかなと……。
よかったね。空けた穴が埋まらなくて……。
でも、いつか男も自分の心といか感情に向き合えたらいいなと思います。
台本を書いていて、そういえば前にも似たような人間を書いたなと思っていたら、君見ず櫻の上條さんでした。あの人も絵を描いていましたね。
でも、重たさというか歪み具合でいえば今回の男の方が上かもしれません。
どうしてか、芸術系の男は歪ませたくなります。
今後、二人が会うことはあるのか、絵を描くことはあるのか。
サイドストーリーをいつか描くなら、やっぱり過去の話かななんて考えながら、あとがきを終えます。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
冒頭でも書きましたが、感想などtwitterのDMやメールなどでいただけますと大変励みになります!
以上、なずなでした。
0コメント