君、朝顔、夏の夢

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登場人物

・優海 ゆうみ(♀)

 高校二年生。


・爽子 さわこ(♀)

 高校二年生。

『君、朝顔、夏の夢』

作者:なずな

URL:https://nazuna-piyopiyo.amebaownd.com/pages/6223525/page_202206292304

優海(♀):

爽子(♀):

サイドストーリーがあります。お読みになる際は本編を読んだ後にお読みください。

本文

優海:「私はずっと同じ夢をみている。

誰もいない教室で一人ぼっちの女の子と朝顔の観察日記を書き続ける、そんな夏の夢。」


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(窓から夏の朝空が見える。静かな教室で目を覚ます優海。)


優海:「・・・・・ん?あれ・・・、朝・・・?え、ここ教室・・・だよね?なんで私教室で寝てたんだろ?

痛・・・っ!頭痛い・・・、なにこれぇ・・・。」


爽子:「・・・起きた?」


優海:「え、あの・・・、誰、ですか・・・?」


爽子:「そんな怖がらないでよ。」


優海:「あの、えっと・・・同じ学校の人・・・ですよね?」


爽子:「同じ制服着てるでしょ。しかも、同じ学年だと思うんだけど。」


優海:「え?同い年?大人っぽいから、3年生だと思って・・・。」


爽子:「それよく言われるんだよね。

私は爽子。よろしくね。」


優海:「えっと・・・、爽子、さん・・・」


爽子:「爽子でも、爽子ちゃんでも、何でもいいんだけど、さん付けはやめて。」


優海:「あ、ごめんね。その・・・、爽子ちゃん?」


爽子:「・・・なに?」


優海:「あの私に話しかけて大丈夫なの・・・?その、悪い意味で有名でしょ?私・・・。」


爽子:「いじめられてる子って?」


優海:「・・・うん。」


爽子:「別に。誰も来ないから大丈夫だよ。だって私の夢の中だもん。」


優海:「へ?」


爽子:「あのさ、お願いしたいことがあって。」


優海:「お願いしたいこと?」


爽子:「そう。訳は聞かないでほしいんだけど、一緒に朝顔の観察をしてほしいの。」


優海:「朝顔?朝顔ってあの植物の朝顔?」


爽子:「それ以外に何があるって言うのよ。」


優海:「そうだよね・・・、え、でもなんで?」


爽子:「訳は聞かないでって言ったでしょ。」


優海:「・・・そうだけど」


爽子:「誰もいない学校にどうしているのか、どうして朝顔の観察をするのか、私は何者なのか・・・、ぜーんぶ気にしないで。」


優海:「そんな無茶な・・・」


爽子:「とりあえず・・・、はいこれ。」


優海:「・・・ノートとペン?」


爽子:「色鉛筆もあるよ。」


優海:「観察日記でも書くの?」


爽子:「そう。朝顔と言えば観察日記でしょ。」


優海:「分かるけど・・・、あー・・・うん。分かった。朝顔の観察日記を書けばいいんだね。」


爽子:「そう、ありがと。話が分かるね。」


優海:「だってこんな変な夢のなかで考えても意味ないもん。

やけにリアルな夢だけど、どうせ起きたら忘れてるんだろうなあ。」


爽子:「夢ってそういうものだからね。よし、じゃあ書こうか。」


優海:「教室の机に朝顔の鉢が置いてあるの初めて見たよ・・・。もう大分つるが伸びてるんだねえ・・・。どのくらいで咲くのかなあ。」


爽子:「さあね。」


優海:「ねえ、今日って何日?」


爽子:「今日は7月1日だよ。」


優海:「あれ、もう7月なの?」


爽子:「そうだよ。これから益々暑くなるんだろうなあ。ほんっとはやく秋になってほしい。」


優海:「爽子ちゃんって夏嫌いなの?」


爽子:「汗かくし、冬のほうが好き。」


優海:「でも、夏休みあるよ?」


爽子:「・・・それが一番嫌なのかも。」


優海:「え?」


爽子:「優海、絵下手だよね。」


優海:「あ!ちょっと、見ないでよっ!」


爽子:「あははははっ。ごめんごめん。もう見ないよ。」


優海:「もう・・・っ。

・・・ねえ、いつもここで朝顔の観察日記書いてるの?」


爽子:「そうだよ。」


優海:「一人で?」


爽子:「うん。誰もいないでしょ?」


優海:「・・・寂しくない?」


爽子:「別に。いつも一人だし。その方が楽だしね。」


優海:「そっか・・・。

あ。ほら見て!さっきより良いでしょう!」


爽子:「さっきよりは、ね。」


優海:「爽子ちゃん冷たい。そんな爽子ちゃんはどうなのさ?」


爽子:「私も絵は得意じゃないよ。でも、優海よりは上手に描ける。」


優海:「ほんとだ・・・。すごい上手。

よーしっ、私も上達して爽子ちゃんにあっと言わせてやるんだから。」


爽子:「付き合ってくれるんだ?最後まで。」


優海:「引き受けたなら最後までやらないと。」


爽子:「まじめだね、優海は。」


優海:「まあね!」


爽子:「なのに、勉強苦手なんだよね。」


優海:「えっ、なんで分かるの?」


爽子:「・・・なんとなく、そんな感じがするから。」


優海:「爽子ちゃんは頭良さそう・・・。教室に朝顔持ち込んでる不良なのに・・・。」


爽子:「朝顔持ち込む不良って何よ。」


優海:「あははっ、なんか可愛いね。不良にしては。」


爽子:「ふふふっ、確かに。

・・・よし、描き終わった。まあ、雑だけどいいか。」


優海:「え?もう?早くない?」


爽子:「優海が目を覚ます前から描いてたからね。」


優海:「あれ・・・、なんだか暗くなってきた。」


爽子:「もう目を覚ますんだよ。だから今日はここまで。」


優海:「あ、ちょっと、爽子ちゃん・・・」


爽子:「また、明日よろしくね。優海。」


優海:「7月1日

誰もいない学校で出会った爽子ちゃんに付き合わされて、朝顔の観察日記をはじめました。

朝顔は花が咲くまでそんなに時間がかからなそうです。

爽子ちゃんは何だかとても不思議な女の子でした。だって、私が普通に話せるから。

まるで、ずっと友達だったみたいな。

友達なんていないから分からないけど。」



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優海:「・・・あ・・・、また・・・教室・・・?」


爽子:「おはよ、優海。」


優海:「爽子ちゃん・・・?おはよ・・・。」


爽子:「ほーら、しゃきっとして。付き合ってくれるんでしょ?」


優海:「う、ん・・・。でも、私朝弱いから・・・」


爽子:「こんな夢の中で朝弱いだなんて言わないでよ。」


優海:「それもそうなんだけど・・・、爽子ちゃんは元気だね。」


爽子:「まあね。」


優海:「ねえ、窓開けてもいーい?」


爽子:「いいよ。」


優海:「私、この夏の匂い好きなんだ。緑の匂いみたいな・・・、なんて言えばいいのか分からないんだけどさ。

あと、夏の始まりを感じる瞬間も好き。日が昇るのが早いなあって思った時とか、風の温度が違うのに初めて気づいた時とか、特別感あるよね。」


爽子:「季節が変わる時のあの不思議な感覚は分かるよ。はい、これ。」


優海:「ん、ありがとう。よーし、描くぞー!」


爽子:「急にやる気出したね。どうしたの?」


優海:「昨日より上手なのを描くんだ。爽子ちゃんが驚いちゃうぐらいのやつ。」


爽子:「ふーん、楽しみにしとくね。」


優海:「できないと思ってるでしょ。」


爽子:「思ってないよ。全然、思ってない。」


優海:「ほんとかなぁ・・・。」


爽子:「ほんとだよ。」


優海:「そっか・・・。

この朝顔って爽子ちゃんの朝顔なんだよね?」


爽子:「え?ああ、まあそうだね。」


優海:「爽子ちゃんも植物好きなの?」


爽子:「別に特別好きってわけじゃないけど・・・。そんなに知らないし。」


優海:「教室に朝顔持ち込んでるのに?」


爽子:「これは夢の中なんだからいいの。」


優海:「私はね、植物好きなんだ。あ、実はねぇ・・・」


爽子:「・・・なにその悪い顔。」


優海:「内緒だよ。あのね、学校の屋上でも育ててるんだ。」


爽子:「・・・屋上で?」


優海:「そう。ほんとは立ち入り禁止だし、バレたら大変なんだけどね。」


爽子:「・・・そう。」


優海:「もっと驚いてもいいのに・・・。」


爽子:「驚いたよ。屋上に持ち込むなんて普通考えないもの。」


優海:「ほんと?

でも、そうでもしないと私学校に来なくなる気がしちゃって。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「ほらっ、水やりとかしなきゃだから、来ないわけには行かないでしょ?あとね、屋上には・・・。

あれ・・・、なんて言おうとしたんだっけ?」


爽子:「寝ぼけてるの?」


優海:「そう、なのかな・・・。

あ・・・、もしかして、屋上に行けば爽子ちゃんにも見せられるのかな。」


爽子:「え?」


優海:「ねぇねぇ、行ってみようよ!屋上!」


爽子:「でも、これ描かないと」


優海:「あとで描こ?ねっ、ほらっ。」


爽子:「ちょ、ちょっと・・・やめてってば・・・」


優海:「いいからいいから、爽子ちゃんは真面目だなあっ。」


爽子:「やめてって言ってるでしょ!!」


優海:「っ」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「・・・あ、えっと・・・、ご、ごめんね。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「・・・爽子、ちゃん?」


爽子:「・・・私、高いところ苦手なの。」


優海:「え、あ、そうだったんだ・・・。ごめんね、無理強いして。」


爽子:「私もごめん・・・。大きな声出したりして。」


優海:「ううん。私が悪いんだし・・・。あ、ほら、続き描こう?ねっ。」


爽子:「・・・うん。」


優海:「7月2日

朝顔は昨日と変わってないように見えました。よくよく見たら、伸びているのかもしれません。

それよりも、私、爽子ちゃんに悪いことしちゃった。

明日、もう一度謝ろう。」



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優海:「・・・ん、う・・・・」


爽子:「優海?起きた?」


優海:「あ・・・、あ、うん爽子ちゃん、おはよ。あの、昨日は」


爽子:「ごめんね。」


優海:「え」


爽子:「だから、ごめんね。」


優海:「ううん、こっちこそごめんね。」


爽子:「はい、おしまい。もう謝るのはなしね。」


優海:「・・・・・・。」


爽子:「なに変な顔してるの。」


(優海の頬をむにっと挟む)


優海:「(頬を挟まれながら)爽子ちゃんほっぺたむにむにしないでよ。私もお返ししちゃうぞっ。」


(爽子の頬を挟む)


爽子:「(頬を挟まれながら)ちょっと、何すんのよ。」


優海:「・・・んふ・・、ふふふふ、あははははっ、変な顔!」


爽子:「そんな優海だって、すごい変な顔してるんだからね。」


優海:「爽子ちゃんには負けますぅ。」


爽子:「負けてませんー!」


優海:「・・・。」


爽子:「・・・なに?」


優海:「爽子ちゃんって睫毛ながいんだねぇ。」


爽子:「・・・急に何言ってんの。」


優海:「あ、照れた?」


爽子:「そんなことありませんー!」


優海:「ぷっ・・・あはははっ」


(爽子も釣られて二人で笑いながら、お互いの頬から手を離す。)


爽子:「あーあ・・・、こうやって謝っとけば良かったのかな・・・。」


優海:「ん?爽子ちゃん、誰かと喧嘩でもしてるの?」


爽子:「喧嘩・・・とは違うんだろうけど・・・。人を傷つけちゃって・・・。」


優海:「なんか意外だなあ。ちゃんと考えてから話しそうだから。」


爽子:「・・・それが、裏目に出ちゃったんだよ。」


優海:「家族?それとも友達?」


爽子:「・・・分かんない。」


優海:「え、あ!もしかして・・・彼氏?」


爽子:「違うよ。」


優海:「えー・・・、じゃあ誰なんだろ。」


爽子:「友達でも、恋人でもなくて・・・、なんて言うんだろ、特別なの。」


優海:「・・・そうなんだ。

・・・ん?待って。喧嘩するっていうことは、爽子ちゃんって本当に人間なの?」


爽子:「え?」


優海:「だって、同じ制服着てるけど見たことなかったし、こんな変な空間で朝顔を観察しているのもおかしいし・・・。てっきり、お化けなのかなって。」


爽子:「お化け?」


優海:「お化けというか妖怪・・・、朝顔観察日記女みたいな?

捕まるとね、変な空間に飛ばされて一緒に朝顔の観察日記書かされるの。」


爽子:「・・・ネーミングセンスないね、優海。」


優海:「えへへ、今のは私も酷いと思う。」


爽子:「・・・もしかしたら、お化けなのかもね。」


優海:「えっ」


爽子:「答えは言わないよ。最初に言ったでしょ?何も聞かないでって。」


優海:「そっかあ・・・。まあ、約束したしなあ・・・。」


爽子:「そうだよ。ほら、こっちばっか見てないで、朝顔見なさいよ。」


優海:「はーい。」


爽子:「・・・ねえ、優海はこの朝顔の花、何色だと思う?」


優海:「え?うーん・・・、あ!せーのって言ったら同時に言ってみよ!」


爽子:「・・・分かった。じゃあ、優海が言ってね。」


優海:「うん。・・・決まった?」


爽子:「いいよ。」


優海:「・・・せーの!」


(二人同時に)


爽子:「白」


優海:「青」


優海:「・・・分かれたねぇ。」


爽子:「・・・優海は・・なんで青だと思うの?」


優海:「朝顔といえば青だからかなあ・・・。何となくだけど。爽子ちゃんは?」


爽子:「・・・私も何となく白がいいなあって思っただけ。」


優海:「そういえば、朝顔の花の色ってなにで変わるんだっけ?聞いたことあるんだけど忘れちゃった。」


爽子:「確か・・・、花びらのpHがどうで、アントシアニンがどうのこうのみたいな」


優海:「あっ、そうだったや。爽子ちゃん、よく知ってたね。」


爽子:「・・・まあね。」


優海:「そういえばね、私も学校の屋上で朝顔を育てて・・・、あ、あれ?育てた・・・?あれれ・・・?」


爽子:「優海・・・?」


優海:「あれ、私っていつもどうしてるんだっけ?最近、朝顔に水やりしたっけ・・・?」


爽子:「夢の中だからね、少しごっちゃになってるんじゃない?」


優海:「そっか・・・。」


爽子:「・・・優海?」


優海:「ううん、大丈夫。ごめんね。なんだかぽけぽけしてて。ほら、続き描いちゃお!」


優海:「7月3日

朝顔はなんとなくだけど、あと少しでつぼみがつくような気がします。

爽子ちゃんと話せるのは楽しいです。

でも私、なにか大切なことを忘れている気がするの。

そういえば、どうして爽子ちゃんは私の名前を最初から知ってたんだろう。」



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優海:「・・・ん、ぅ・・・、あれ・・・、みんないる・・・。いつもの学校だ。じゃあ、これは夢じゃないの?・・・爽子ちゃんは?」


(いつも通り、クラスメイトで賑やかな教室をきょろきょろする優海。)


優海:「あれ・・・私?私がもう一人いる・・・。」


(優海):「もう止めてよ・・・っ。」


優海:「これ、この前の・・・。どうして・・・あの日のことが・・・?」


(優海):「あの写真を撮ったらもうやらないって約束だったでしょ・・・!!お願い、やめてよ・・・っ!

・・・どうして誰も助けてくれないの・・・っ?」


(爽子):「あ・・・、ううん、全然知らない子。人違いじゃない?」


優海:「これ・・・」


(爽子):「無理に決まってるじゃん、そんなの。私たち、どこにも行けないんだから。」


優海:「さわちゃん・・・?」


爽子:「・・・優海っ、優海!!」


優海:「・・・っ!

あ・・・っ、爽子、ちゃん・・・?」


爽子:「どうしたの?大丈夫?」


優海:「・・・・・・。」


爽子:「優海?」


優海:「・・・ごめんね。ちょっと嫌なこと思い出して・・・。大丈夫だから・・・。」


爽子:「・・・何を?」


優海:「・・・・・・」


爽子:「優海。」


優海:「・・・ここ夢なんだもんね。じゃあ・・・、じゃあ、言ってもいいかなあ・・・。」


爽子:「・・・うん。」


優海:「毎日ね、無視されて、教科書も何冊もだめになっちゃって、でもお母さんたちに心配かけたくなくてお小遣いで買い替えて。お弁当を捨てられても美味しかったよってお母さんに渡してるの・・・。あと、あと・・・恥ずかしい写真撮られて・・・、誰も助けてくれなくて・・・っ、でもそれは私がこんなんだから仕方ない気もして・・・、だから私、一人ぼっちで・・・それで、私。」


爽子:「優海。」


優海:「・・・爽子ちゃん・・・?どうしたの?」


爽子:「ぎゅーってすると元気になるって聞いたことがあるから。」


優海:「・・・・・・。」


爽子:「・・・一緒だね。」


優海:「え?」


爽子:「私は学校じゃなくて家だけど・・・。血の繋がった母親と血の繋がってない父親、その間に生まれた弟は家族なんだけど、私は荷物でしかないんだって。だから、私も一人ぼっち。ね、優海と一緒。」


優海:「一緒か・・・。

・・・えへへ、爽子ちゃん、あったかいね。

・・・ねえ、もう少しこうしててくれる?」


爽子:「ん、いいよ。特別に許可してあげる。」


優海:「ふふっ、なにその言い方。

・・・何だか懐かしいなあ。なんでだろ・・・。」


爽子:「・・・そう。」


優海:「・・・ねえ、爽子ちゃん」


爽子:「なあに?」


優海:「私たちって会ったことあるの?」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「もしかして、現実の世界で私たち」


爽子:「約束。」


優海:「え?」


爽子:「約束したでしょ。何も聞かないって。だから、言えない。」


優海:「・・・だって、現実に戻ったら、忘れちゃうんだもん。だからせめて今だけでも知りたいの。なんで爽子ちゃんは

こんなところにいるの?

なんで夢の中で会ってるの?なんで、朝顔を観察してるの?

なんで・・・、なんで私の朝顔を育ててるの・・・?」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「・・・言えないか。そうだよね。聞いても忘れちゃうもん。意味ないよね。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「そんな顔しないでよ。ごめんね。」


爽子:「・・・ううん。」


優海:「日記書こうか。ほら、なんかつぼみみたいのあるよ。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「・・・えいっ。」


爽子:「・・・なに?」


優海:「ぎゅーのお返し。」


爽子:「なによ、それ。」


優海:「私たち一人ぼっちだけど、今は二人ぼっちだよ。」


爽子:「・・・っ」


優海:「よしよーし。ふふふ、爽子ちゃん甘えたですねえ。」


爽子:「・・・調子乗らないの。」


優海:「えへへ、はあーい。」


優海:「7月4日

朝顔につぼみができていました。何色の花が咲くのかな。

私、ここに来ると全部嫌なことを忘れて、楽しくいられるの。

まるで屋上みたいに。

あれ、なんで屋上って書いたんだろう。

私たち、二人ぼっちで・・・、あ、でも結局私は一人ぼっちだったんだっけ?」



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優海:「朝顔すごいつぼみ増えてるね。明日には咲くかなあ。」


爽子:「咲くかもね。」


優海:「・・・ねえ、爽子ちゃん。朝顔が咲くまでなんだよね。」


爽子:「・・・そうだね。そう決めてたから。」


優海:「そしたら、もうこの夢で爽子ちゃんに会えないの?」


爽子:「・・・そうだね。」


優海:「寂しいなあ・・・。また、一人ぼっちになっちゃうの。」


爽子:「・・・私だって一人ぼっちだよ。」


優海:「でも、私よりもきっと上手に生きれてるよ。」


爽子:「なによ、それ・・・。」


優海:「でもさあ、ずっとここにいたかったなあ。

毎日、朝顔観察して、どうでもいい話して、たくさん笑って・・・。

・・・いっそ、二人でここに逃げちゃおっか!」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「ほら、私なんてちっぽけな人間じゃん。いなくなったところで何も変わらないし、きっと。でも、爽子ちゃんは違うしなあ。」


爽子:「・・・なんで、そんなこと言うの?」


優海:「爽子ちゃん・・・?」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「な、なあに?どうしてそんな顔するの?冗談だよ。ごめんって。」


爽子:「・・・冗談じゃないでしょ。それ。」


優海:「冗談だよ。変なこと言ってごめんね。」


爽子:「・・・うそだよ。優海のうそつき。」


優海:「え?」


爽子:「だって、私が優海を一人にしたから優海は」



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優海:「ん・・・、あ・・・、昨日急に途切れて、あれ、爽子ちゃんがいない・・・。

朝顔もないし・・・、爽子ちゃん、どこにいるの?

・・・また一人ぼっちにされちゃうのかな。

また、一人で・・・。また一人で屋上で・・・。

ああ、そっか・・・。私・・・」



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(ここから回想シーン)


優海:「あ、さわちゃん!おはよ!」


爽子:「おはよ、優海。相変わらず早いね。」


優海:「人目につかないからね。屋上にいるのバレたくないもん。」


爽子:「で?なにやってんの?」


優海:「実はねぇ・・・、今日から朝顔を育てたいと思います!」


爽子:「朝顔・・・?なんか懐かしい響き。」


優海:「これから育てれば、多分7月の最初の方に花が咲くはずだよ。

・・・って、さわちゃんどうしたの?なんか、ここ腫れてない?」


爽子:「ああ・・・、目立つかな?」


優海:「いや、すごい目立つわけじゃないけど・・・。でも、どうしたの?痛くない?」


爽子:「少し母親の機嫌が悪くてさ。」


優海:「お母さんにやられたの・・・?」


爽子:「まあ、滅多にないから心配しなくていいよ。」


優海:「そんなこと言われても心配するよ。あ、ぎゅーってしてあげよっか。」


爽子:「元気になるおまじないでしょ。今は遠慮しとく。」


優海:「えー、よく効くのに・・・。」


爽子:「あと、優海にだけは心配されたくない。」


優海:「うっ・・・。でも、ほら私は丈夫だし・・・。」


爽子:「・・・二年生になってからどう?落ち着いた?私、優海のクラスとは別校舎だし、よく知らないんだけどさ。」


優海:「まあ・・・、うん。落ち着いたのかな。」


爽子:「クラス替えがないんだから言えばよかったのに。違うクラスが良いって。」


優海:「そんなこと言ったらお母さんとお父さんに心配かけちゃうし・・・それに私は大丈夫だよ。そんなに酷いことされてないから。」


爽子:「・・・・・・ほんと、上手くいかないよね。16歳にしてこんなに上手くいかないことってあるんだなって感じ。」


優海:「私もいじめられるとは思ってなかったや。」


爽子:「私も親が離婚して、母親に引き取られたと思ったら、母親にも、その再婚相手にもこんな散々な目に遭わされると

は思ってなかった。」


優海:「学校で一人ぼっち。」


爽子:「家で一人ぼっち。」


優海:「・・・ふふっ、なんか面白いね。」


爽子:「笑える話じゃないでしょ。」


優海:「でも、今は二人ぼっちだよ。」


爽子:「・・・二人ぼっちか。」


優海:「さわちゃんが何となく屋上に来てくれて良かった。そうじゃなきゃ、話すこともなかったもんね。」


爽子:「あの時の優海、面白かったなあ。驚きすぎてて。しかも、3年生だと思ったとか言い始めて。」


優海:「そりゃ、驚くよ。だって、ここ屋上なんだもん。それに、さわちゃん大人っぽいからさ。

こうやって仲良くなれて良かった。私、人見知りで面白くないし、どんくさいし、可愛くないし・・・」


爽子:「そんなこと気にしてません。」


優海:「そっかあ・・・。でも、さわちゃん友達いるでしょう?良いの?こんなところにいて。」


爽子:「こんな早い時間なんて誰も来てないよ。」


優海:「確かに・・・。」


爽子:「あ、ねえ、朝顔育てるんだったら、観察日記描かない?花が咲くまで。」


優海:「観察日記?あー、懐かしいなあ。いいね、それ。」


爽子:「でしょ?あ、私色鉛筆取ってくる。ちょっと待ってて。」


優海:「分かった。ありがとうね。」


爽子:「・・・あ、優海。」


優海:「ん?」


爽子:「優海は可愛いよ。そこは修正しといてあげる。」


優海:「え、あ・・・、えへへ、ありがとう。」


爽子:「照れないでよ。・・・じゃあ取ってくるね。」



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優海:「さわちゃん、見て!芽が、芽が出てるの!」


爽子:「あ、ほんとだ。」


優海:「やっと土以外のものが描けるよ。」


爽子:「思い返せば土だけ描く意味ってなかったよね。」


優海:「あはは、そうかも。

あー懐かしいなあ、朝顔の観察日記。私、時間内に描き終わらなくて休み時間に描いてた。」


爽子:「それ想像つくなあ。

優海、夏休みの日記の宿題とか、休みの最後の日になってから全部やってたタイプでしょ?」


優海:「えへへ、せいかーい。遊ぶことしか考えてなかったからね。

さわちゃんは余裕持って終わらせてそう。」


爽子:「まあ、遊びに行くこともなかったしさ。家族旅行とかも一人で留守番してたし。」


優海:「さわちゃん・・・」


爽子:「はいはい、そんな顔しないの。もう慣れたし、一人の方が色々と楽だしね。

・・・あ、そういえば昨日、クラスの友達と駅前に新しくできたカフェに行ってきたんだ。優海もできるの楽しみにしてたでしょ。一緒に行かない?」


優海:「え、ああ・・・、ううん、大丈夫。」


爽子:「なんで?」


優海:「そんな無理しなくてもいいんだよ、さわちゃん。」


爽子:「そんなこと・・・。

この前のこと怒ってる・・・よね?優海のこと全然知らないって嘘ついたこと。」


優海:「・・・あれは私が悪かったんだもん。ここ以外では話さないって決めてたのに、声かけちゃって。」


爽子:「それは」


優海:「いいのいいの。いじめられてる子と仲が良いって思われるなんて、そんなのみーんな嫌だよ。当たり前。だから気にしなくていいんだよ。」


爽子:「・・・優海。」


優海:「私だって、さわちゃんが家でひどいことされてても助けられてないし・・・。だから、さわちゃんも何もしなくていいの。そうじゃないと・・・、つり合いが取れないからさ。」


爽子:「・・・ごめん。」


優海:「いいってば。」


爽子:「・・・じゃあ、どこか一緒に行きたいとこあったら言って。そしたら付き合うよ。」


優海:「ありがと。・・・さわちゃんは優しいね。」


爽子:「よく言われる。優海に。」


優海:「えへへ。」



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優海:「さわちゃん、おはよー!」


爽子:「おはよ。どう?朝顔の様子は。」


優海:「元気だよー。ほら、つたもにょきにょきしてるし。

ねえ、この朝顔って何色だと思う?」


爽子:「えー、なんだろ・・・。あ、」


優海:「待って待って!同時に言おう。せーのって言うから。」


爽子:「え、ああ、分かった。いいよ。」


優海:「行くよ・・・、せーの!」


(二人同時に)


爽子:「青」


優海:「白」


優海:「・・・分かれたねぇ。なんでさわちゃん青なの?」


爽子:「なんとなく?イメージかな。」


優海:「私もなんとなく。

あ、知ってる?アジサイの花の色は土のpHで決まるんだけど、朝顔には関係ないんだって。」


爽子:「へえー、じゃあどんなので変わるの?」


優海:「花びらのpHだったかな。アントシアニンが関係してて・・・、よく覚えてないや。でも、朝顔の花言葉は知ってるよ。」


爽子:「なに?」


優海:「愛情と結束だったはず。」


爽子:「あー、ツタが巻き付くからか。」


優海:「多分ね。私はあなたに結びついて離れないわって。

でも、色ごとにもあるんだけどなんだっけ・・・?」


爽子:「気になるじゃん・・・。ちょっとまって、スマホで検索するから。」


優海:「お、気が利くね。」


爽子:「あ、えっとね・・・、白は固い絆、あふれる喜び。」


優海:「へえー、いいねいいね。」


爽子:「青は儚い恋、短い愛・・・だって。」


優海:「えー!!やだよー。」


爽子:「まだ、青って決まってないでしょ。」


優海:「でも、さわちゃんの勘の方が当たりそうじゃん・・・。よしっ、白い花でありますように。ほら、さわちゃんも

っ。」


爽子:「はいはい。

・・・白い花でありますように。」


優海:「よし、これはきっと白い朝顔でしょう。」


爽子:「だといいね。」


優海:「ねっ。」



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爽子:「優海、おはよ。

・・・・・・優海?」


優海:「あ、さわちゃんおはよ。」


爽子:「・・・どうしたの?」


優海:「どうしたって何が?」


爽子:「いや、なんとなく様子がおかしいなって。」


優海:「そんなことないよ。めちゃめちゃ元気。」


爽子:「・・・そう。」


優海:「・・・さわちゃんはさ、逃げたいと思うことない?」


爽子:「え?」


優海:「私は逃げたいなあって思っちゃうんだ。でも、お父さんもお母さんも心配させちゃうし、逃げるほどのことでもないんじゃないかなって思うんだけど・・・。それでも、そう思っちゃうんだ。」


爽子:「・・・私もそりゃ、あの家を出たいなあって思うけど。」


優海:「・・・ねえ、さわちゃん。」


爽子:「・・・なに?」


優海:「逃げちゃおっか。」


爽子:「優海?」


優海:「私をいじめてる奴らと、さわちゃんの家族をみーんな倒して、それで二人でどこかに行こう!

それでこの朝顔を二人で育てながら毎日観察日記描いて、それでどうでもいい話して、たくさん笑って・・・。

ねっ!二人で逃げちゃお!」


爽子:「無理だよ。」


優海:「・・・え?」


爽子:「なに馬鹿なこと言ってるの。無理に決まってるじゃんそんなの。私たち、どこにも行けないんだから。」


優海:「あ、ああ、そうだよね・・・。」


爽子:「倒すって殺すってことでしょ?そんなのやったほうが損するし、そこまで辛いわけじゃないし・・・。」


優海:「や、やだなあ、冗談だよ。そんなの本気で言うわけないじゃん。ごめんねっ、びっくりしたでしょ?

あ、私先生に呼ばれてるんだった!あの、もう水やりもしたし、もう戻って大丈夫だよ。ごめんねっ。いやー、こんなこと

忘れてるなんて私ほんとに馬鹿だよね。あはは、じゃあ、また明日ね!」


爽子:「ちょ・・・っ、優海!」



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優海:「6月15日

私がいちばん、だめでした。

だから、遠くに逃げたくなってしまったんです。

ただ、朝顔を見ながらお喋りして、たくさん笑って、息がしやすいそんな場所に行きたい。

私、一人ぼっちでもいいから。

どうか、あの朝顔が青色でありますように。

さようなら。」



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優海:「ああ、そっか・・・。私、死んだんだ。」


爽子:「優海・・・。」


優海:「屋上から飛び降りるなんて、すごい迷惑かけちゃったんだろうなあ・・・。」


爽子:「・・・ねえ」


優海:「なあに?さわちゃん。」


爽子:「屋上で優海といる時間ね、私・・・、とても息がしやすかった。」


優海:「・・・うん。」


爽子:「親のこととかで、人を信じるんじゃなくて疑うことばかり覚えて、友達も楽しそうに見えるよう表面だけ繕って、信じようとも思わなかった。

一人の方がずっと楽だと思ってた。なのに、私ここだとちゃんと笑えてたの。」


優海:「さわちゃん・・・。」


爽子:「優海がいたから一人じゃなかったのに・・・、なんで・・・、なんで一人で死んじゃったの・・・っ?」


優海:「・・・・・・。」


爽子:「どうして言ってくれなかったの・・・?優海、大したことされてないって言ってたじゃん!

あんなに酷いことされてたのに・・・っ。なんであんなに我慢しちゃったの・・・っ?

なんで、なんで死んじゃったの・・・。なんで、私を一人ぼっちにしたの!!」


優海:「・・・ごめんね。」


爽子:「あやまらないでよっ!!」


優海:「・・・・・・。」


爽子:「分かってるの、分かってる・・・。優海、いつも寂しそうにしてた・・・。外で会ったときに嬉しそうに話しかけてくれたのに私、知らないふりしたりして・・・。

逃げたいっていった時に私、一緒にいればよかった・・・っ。私が最初に一人にしちゃったからなんだよね・・・?あの時突き放したから優海、一人で遠いところに逃げちゃったんでしょう・・・っ!。

私、行きたいところがあれば付き合うって約束したのに・・・。私・・・私、優海を一人で行かせちゃった・・・っ。ごめん・・・ごめんなさい・・・っ!。

・・・っ!!」


優海:「・・・ぎゅーってすると元気になるんでしょ。私が言ったんだけどね。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「ごめんね、さわちゃん。私、ほんとうにさわちゃんのこと一人にしちゃったんだね。」


爽子:「ゆ、うみ・・・。」


優海:「私がどんなことされてたのか知っちゃったのかぁ・・・。自分でも言っちゃったしね。嫌だなあ。さわちゃんには知られたくなかったのに。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「生き地獄ってこういうことを言うんだろうなって思った。だけど、同じ一人ぼっちのさわちゃんがいたから頑張れたの。それでも、死んじゃったのはさ、あの前の日に少し嫌な写真撮られちゃって、それで逃げたくなっちゃったの。

・・・あのね、一緒に逃げよって言ったの、半分本気で半分冗談だったんだ。さわちゃんはしっかりしてる良い子だから考えて、できっこないって教えてくれたんだよね。

でも、あの日の私は少しおかしくてね、私一人にされたって思っちゃったの。手を離されちゃったんだって。

それで、それで一人で逃げたくなって、ここから飛び降りて死んじゃった。」


爽子:「・・・私が、私があの時、いいよって言ったら優海は生きてくれてたの?」


優海:「どうだろ・・・。分からないや。

あ・・・」


爽子:「・・・優海?」


優海:「・・・朝顔、咲いたんだ。

白い花だったんだね。」


爽子:「・・・なんで、最期に青色でありますように、だなんて書いたの?」


優海:「あー、死ぬ前に書いたやつ、読んじゃったんだ。恥ずかしいなあ・・・。だって、白い花は固い絆なんでしょう?なんかさわちゃんを縛り付けちゃいそうで嫌だなって。

青だったら、ああ儚い思い出だったなあ、で済むかもしれないって。」


爽子:「なにそれ・・・。そもそも朝顔の花言葉があなたに結び付くとかの時点でだめじゃん。」


優海:「あははっ、確かに。

・・・でも、花が咲いたから今日までなのかな、この夢も。」


爽子:「・・・そうだね。」


優海:「なんで私、さわちゃんのこと思い出せなかったんだろ。」


爽子:「嫌なこと忘れたかったんじゃない?」


優海:「えー、さわちゃんのこと好きなのに?

あっ、そういえばさわちゃん、友達でも、恋人でもない、特別な人って言ってたじゃん。あれって、私のこと?」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「あ、黙っちゃった。」


爽子:「・・・そうだけど。」


優海:「えへへ、照れちゃうなあ。まあ、遊びにも行かなかったし、ここ以外で話すことなかったし、なんだろ・・・。一人ぼっち同盟?」


爽子:「でも、今は二人ぼっち、だよ。」


優海:「ふふふっ、そうだね。

・・・さわちゃんは起きたら夢のこと覚えてる?」


爽子:「・・・なんとなくかなあ。覚えておけたらいいのに。」


優海:「私はちゃーんと覚えといてあげるね。それで、さわちゃんがおばあちゃんになって、空の上に来たら教えてあげるの。

さわちゃんったら、全然私から離れなくてね、甘えたさんだったんだよーって。」


爽子:「優海からくっついたんでしょ。」


優海:「・・・それでね、お返しにぎゅーってしてもらって、生きている間の話をたくさん聞くんだ。」


爽子:「・・・・・・。」


優海:「えいっ」


爽子:「きゃ・・っ、なにすんのよ、優海・・・。」


優海:「ほら、見てさわちゃん。ここから見る空ってすごい広いよね。」


爽子:「・・・うん。」


優海:「夏空だなあ・・・。」


爽子:「・・・そうだね。」


優海:「・・・ねえ、さわちゃん。私、今ちゃーんと笑えてる・・・?」


爽子:「・・・笑えてるよ。下手くそだけど。」


優海:「あのね・・・、さわちゃん。一人ぼっち同盟はもう解散ね。」


爽子:「・・・っ。」


優海:「私のことなんて忘れて、さわちゃんが寂しくないように素敵な人たちと一緒にいるんだよ。

大丈夫、さわちゃんならできるから。」


爽子:「・・・優海の馬鹿。そしたら、優海は」


優海:「えへへ、私は朝顔みたいに“あなたに結び付いて離れないんだから”っなんて言わないよ。」


爽子:「・・・寂しがり屋なのに?」


優海:「さわちゃんだって寂しがり屋さんでしょ?

・・・ねえ。」


爽子:「なあに?」


優海:「私たち、一人ぼっちだったけど楽しかったね。」


爽子:「うん、楽しかった。二人ぼっちで楽しかった。」


優海:「・・さわちゃん、さわちゃんは約束守ってくれたんだよ。」


爽子:「え・・・?」


優海:「私、朝顔を見ながらお喋りして、たくさん笑って、息がしやすいそんな場所に行きたいって書いたでしょ?

ちゃーんと守ってくれたじゃん。ありがとう、この夏の夢まで・・・、最期まで付き合ってくれてありがとう。二人ぼっちでいてくれてありがとう。

・・・ばいばい、さわちゃん。

だーいすき。

どうかどうか、さわちゃんが一人ぼっちになりませんように。」



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爽子:「7月6日

今日、白い朝顔の花が咲いた。

夢の中で最期にあの子が何か言っていたんだけど、はっきりと思い出せない。

寂しがりやなあの子のことだから、「私と再会する日まで一人でいてね」みたいなことを言っていたのかな。

あんな寂しそうな下手くそな笑顔で言われなくても、私一人ぼっちでいるのに。だって、優海の傍でしかちゃんと笑えないんだから。


また、いつか会えるのかな。

不思議で切なくて、幸せで、空が青くて、夏の匂いがする、そんな場所で。

二人ぼっちの女の子が朝顔の観察日記を描いているだけの、そんな夏の夢で。」


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