「まだ見ぬ花を戀しく思い 遠くの春を愛おしむ」あとがき
「まだ見ぬ花を戀しく思い 遠くの春を愛おしむ」を読んでくださってありがとうございます。
まだ読まれていない方はこちらからどうぞ。
なずなです。
Twitterやサイトのトップページにもある通り、1月23日で薺箱が3周年を迎えました。
それと合わせて公開する予定だったのですが、あまりにも長くなってしまい削ったり、見直したりで過ぎてしまいました。
あとがきですが、いつもごちゃごちゃしていて読みにくいと思うので目次を書いておきます。
1.作品全体について
2.都々逸について
3.人物に関して(演じる方はこちらだけでも読んでいただくことをお勧めします)
3.3周年とこれからに関して
1.作品全体について
この作品の大本自体はこういった創作活動をする以前に考えていたものでした。
お話を考える、人物像を考える。
ただそれを一人で楽しんでいた時に考えたものの一つです。
元々は、小説家と女学生2人しか出て来ない話で、大正時代の図書館が舞台の話しだったのですが、テーマというか雰囲気を個人的に気に入っていたのでいつか考え直して書きたいなあと思っていました。本当は去年の1月あたりにプロットを組んでいたのですが、なかなか時間が取れず、やっと完成させることができました。
大逆罪とでてきたので、明治43年に起きた大逆事件である幸徳事件が頭に過った方もいらっしゃると思います。なかなか興味深い話ですので、気になった方は調べてみると面白いかもしれません。
この話は明治が45年で終わらず、46年を迎えており、さらに政府が厳しく取り締まっていたらという架空の世界の話ですので、実際の事件と少し関係はあるけれど、そこまで密接な関係があるわけではありません。
久しぶりの4人台本だったので、上手く纏まるか心配だったのですが90分だったので纏まってはいないような気がします。でも、当初は120分だったのでマシにはなったのです。
ただ結構、細かく新聞社のことや實たちの過去の話を考えたものの書きはしなかったので、ちゃんとした物語になっているか心配ではあります。
一番のメインのところは「戀とは?」というところなので、そこが分かればセーフかなと……。
ですが、個人的には思い入れもありますし、何と言っても取り扱いたかった都々逸をやっと台本に登場させることができたので、出来はともあれ気に入っています。
2.都々逸について
都々逸はいつか物語で取り扱いたいなとずっと思っていました。
良いですよね。でも考えるのは不得手でしたね。
・惚れた弱みにゃ あなたが今も あたしに変わらず 紅を差す
・まだ見ぬ花を戀しく思い 遠くの春を愛おしむ
(これらの唄の内容に関しては、實と紅緒のところで説明します)
この二つを考えたのですが、難しかったです。
特にですね、題名にもなっている「まだ見ぬ花を戀しく思い 遠くの春を愛おしむ」に関しては、少し基本的なものと異なります。
基本的には7・7・7・5の計26文字なのですが、これをさらに分けると7(3.4)・7(4.3)・7(3.4)・5なんです。理由としてはリズムが良くて唄いやすいからです。
でも、この唄だと7(4.3)・7(4.3)・7(4.3)・5なんですね。
實はこういったものを考えるのは不得手なので、それでもいいかなという気持ちと、ルールに縛られすぎるのも良くないと本で目にしたので、まあいいかの気持ちで直しませんでした。明治頃には唄うものではなくて、文芸としても認識されていましたしきっと大丈夫なはず……。物語中でも楽しみ方は文芸としてといった形ですしね。
都々逸、他にも色々ありまして、7(4.3)・7(4.3)・7(4.3)・5のうち、最初と3番目は8字でも良かったり、2つ目は7(2.5)でよかったり、五字冠と言われる5・7・7・7・5なんて形もあります。
お気に入りの歌もたくさんあるので、またいつか出せたら良いなと思っています。
その時にはもう少し良い都々逸を考えたいものです。
・人物に関して
*はる
實に戀をした女学生。
子供だけど子供じゃなくて、でも大人でもない。
そんな”少女”と呼べるようなそんな子を目指して書きました。
花も好きだけど、本当は實目的でやってきていたはるは良い子なんだけど、少し周りが見えていないイメージがあります。
はるは戀に戀をしていると言われますが、最初はそういう側面もあるでしょうし、憧れからというのもあるとは思います。でも、戀のきっかけって人それぞれですからね。
紅緒さんの仰る通り、花開いていく様がいいものだと思っています。
はるちゃんは本当に後のことは考えておらず、今の現状だけ見て幸せを感じており、そういったところが太一には腹立たしかったのでしょうが、そうなってしまったのは世の中のせいでもあります。
でも、太一や紅緒との関りなどのなかで、はるの戀心はよりしっかりとしたものになっていきました。
最終的に實が望まないからという理由で会えないという選択をしたはるですが、土壇場になって實に縋りました。
ここ、本当に悩んでところで、はるがただ遠くから見守るという選択をした場合のも書いたのですが、やっぱり物分かりのいい大人にはなれていない方がはるらしいなと思い、駆け寄ろうとしてしまうシーンにしました。
個人的な考えなのですが、少女というのは作中にも出てくる通り、子供でも大人でもない時期で、一番自分の感情で素直に動けてしまう時期だと思うんですね。
だから、この時期に決めたことって勢いで選択して捨ててしまうこともあるけれど、中には一生もののこともあって。
はるにとっては、この戀はそういったものになったんだと思います。
これから先、はるはどうしても結婚したくなくて家を出るんじゃないかな。
紅緒さんや太一という支えてくれる人がいるし、はるも支えられるように成長していくと思うので。
*實
實に関しては、「おれ」という平仮名の一人称の男が書きたくてというのが人物像を考える上での一番のきっかけでした。
ただすごく難しかったです。
恋愛ものって女学生シリーズの女の子同士のものしか書いたことがなくて、男性が戀をしているさまを書いてこなかったんです。
勿忘の花は戀というよりは愛のイメージでしたし、他の男女だと明確に恋愛感情というものを出して書いたことがなかったので、すごいすごいかゆかったですね。
實は読めばわかる通り、はるにべた惚れです。
そういった感情は抱くとも思っていなくて、本当に面白い娘だなというぐらいにしか最初は思っていなかったのでしょうが、もうべた惚れです。
紅緒にも言われていた通り、色戀には疎く、あまり恋愛事をしてこなかったので、はるちゃんにどう話していいのかもよく分かっていないんじゃないかな……。
はるだけには、口調があまり崩れていなかったりするのはそういったところからです。
とにかく、大切に扱っていたのかなと。
都々逸「まだ見ぬ花を戀しく思い 遠くの春を愛おしむ」に関しては、花は作中でもでてきた通り、何の思い入れもない花なのにいつの間にか戀しく思うようになっているということなのですが、遠くの春を愛おしむに関しては、察するとは思うのですが、春=はる です。
実際は近いのですが、もう会えないし、もう死んでしまう實にとっては、何よりも遠い存在になってしまうはるを愛おしんでいるという唄です。
また、春が来たら、あの花が咲いてくれるのかなという意味での春でもあります。
書いていても?が浮かんでくるので、あまり上手な唄とは言えないかもしれませんが、個人的には満足しています。
作中で、實が連れて行かれるシーンではるの方を振り向いて、なにか言うシーンがありますがここは当初、都々逸が入る予定でした。でも、聞こえるはずもないので消したのですが、本当は言っているんだと思います。聞こえていないだけ。
作中では書けなかったのですが、實がはやく移動したいと言ったのは、この場所を残しておきたかったからです。もしここで捕まればこの家に自由に出入りできなくなって、はるが梅の花を見に来ることは難しくなってしまう可能性を考慮したための言動でした。
また、勇巳の書いていた小説を引き継いで書くことができたのは、勇巳が實にどういう話になるのかを語っていたからです。きっと酒でも吞みながら語り合っていたんでしょうね。
*紅緒
勿忘の花でいう久子と似たポジションのお姉さんです。
私、こういったお姉さん大好きでどうしても書きたくなってしまいます。
人気作家ですのでツテも金もあるのですが、うまく使って實たちを支えています。
實や勇巳と同郷で、子供の時から仲良くしていたんだと思います。
紅緒と勇巳は本が好きで、自分でも書き始めるようになり、お互いに交換して読んだり、實に読んでもらったりしていたんだろうなあ。
紅緒が作家を志して上京する時に、實と勇巳も一緒に上京してきたのですが、たまに会ってもとくに何をしているのかは教えてもらえず、年月が経ち、忙しく過ごすうちに勇巳が亡くなってしまったので、かなり深い傷が残っています。
なので、はるちゃんを応援したいという気持ちがかなり大きいです。
都々逸、惚れた弱みにゃ あなたが今も あたしに変わらず 紅を差す ですが、読んでもらった通りの唄で特に深い意味はありません。紅緒さんは紅をひくときはいつも勇巳のことを思い出すでしょうし、頬を赤らめることも勇巳ではないとできないと思います。
はるちゃんと同じく、少女だった頃から勇巳に戀をしているのですが、今も変わらず思っており、それが原動力となって動いているんだろうな。
紅緒が終盤に言う「来世なんて知ったこっちゃないわ」っていうのは、この物語を考え始めたときに絶対に入れたいと思っていた言葉です。本当にその通り。だって、来世で会っても今のことなんて覚えていないじゃない。
ただ、勇巳や實がそのために頑張っていることを責めようとは思えないし、そうなればいいとも紅緒さんは思っているとは思います。
*太一
はじめて、10代の青年を書きました。
アストロメリアの二人は少年だし、王と死神のライナスはもう少し年上の20代です。
難しかったですね。先生をかなり尊敬していて、小生意気な感じが出ていればいいなと思います。
はるに散々なことを言いますが、それを悪かったかなって思える良い子です。
ただ、先生が第一なので邪魔は邪魔だと思っています。
でも、そんな太一が先生の頼みを聞かずに、はるに報せに行くのです。かなり強い気持ちというか、勇気をもって動いたんだと思います。
はるからのありがとうや、がんばったわよっていう紅緒さんの言葉に救われていれば良いな。
ずっと見てきた先生ことなのではるに惚れているという確信はないけれど、最初から気づいていたんだろうな。でも、こんな小娘が傍にいたら……、でもこいつも悪いやつではないし……みたいな。そんなぐるぐるした感情がいつもあったんだと思います。
きっと二人が思いを告げて恋人になったら、太一はため息をつきつつ、なんだかんだ言いながらも二人のために行動していたとは思います。
今後は實から頼まれたことをしつつ、作中で言っていた通りに頑張ると思います。
いつか二人が、紅緒が、自分が、国民が幸せになれるように。
3.3周年とこれからに関して
3周年を迎えました。本当にただそれだけなのですが、個人的には驚くべきことだと思っています。去年も驚いていたのですが、ここまで続いているとは思っていませんでした。
あんまり成長はしておらず、未熟なものですが、まだまだ楽しいと思える内は続けていこうと思っています。
たくさんの人の目に触れたいわけではなく、誰かの心に残ればいいなあ、好きだなと思っていただけたらなあという気持ちで、これからもひっそりと続けていきます。
また、現在マーダーミステリーを制作中なのですが、今年は台本だけではなく、いろんなものを作れたらいいなとふわふわと考えています。
これからもよろしくお願いいたします。
以上です。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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以上、なずなでした。
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